Nomura Piano School
これまでの経験談
1. ロシアピアニズムに出会うまでの苦労
私はピアノ講師をしている母の影響もあり4歳からピアノを習い始め、小・中学校の頃にはコンクールで賞をいただくことも出来ており、音楽の道に進むために音高・音大へ進学しました。
ロシアピアニズムに出会うまでのテクニックの練習は一般的によく用いられているツェルニーやハノンを用い、弾きにくい箇所をリズム練習、メトロノーム練習、スタッカート練習で補正するようにしていました。しかし、このような練習を続けていたところ左手首が何度も腱鞘炎になってしまうことがありました。腱鞘炎について調べると「過度な練習」だけでなく「手に負担がかかる弾き方」をしていることが原因であることを知りました。このため、この頃から自分の練習方法や弾き方に疑問を持つようになりました。
このような疑問を持ちながらも音高・音大では多くの曲に触れてきましたが、表現したいように自分の指は動いてくれず、次第に演奏技術の限界を感じるようになりました。また、先生方からも「音が硬い」と指摘を受け、しかしながらどうやって硬くない「豊かな響き」を出せるかが分からず、自分の手を憎く思うこともありました。
それから、大学卒業後の進路をそろそろ決めなくてはならない3回生になるまで、私はいわゆる「ピアノのテクニック」に関する本を読み漁りましたが、どれも自分の中でしっくりくるものはありませんでした。
2. ロシアピアニズムとの出会い
ピアノのテクニックについて調べていたところ「ロシアピアニズム」に出会うことができ、これが自分の転機となりました。ロシアピアニズムは今まで教わってきたこととは全く異なる奏法でした。例えば、これまで習ってきた奏法では指の第一関節はしっかり固め、腕は脱力してぶら下がった状態で弾きます。また、芯のある音を出すために鍵盤の底までしっかり弾かなければいけないと言われています。一方、ロシアピアニズムでは第二関節近くまで伸びている虫様筋という筋肉で支え、第一、第二関節が緩んだ状態で弾きます。さらに、手首の下の腱から前腕の下による支えも重要とされています。また、豊かな音を出すために浅いタッチで鍵盤の底に触れるのは最小限にすることが良いとされています。
このようなロシアピアニズムの奏法は私に衝撃を与え、興味は増すばかりでした。そこでロシアピアニズムを研究されている丸尾祐嗣先生に習いに行きました。丸尾先生には今でもお世話になっています。
ロシアピアニズムを教わってすぐに大きな変化を感じました。手が小さく苦手としていた和音やオクターブも楽に弾けるようになり、速いパッセージも先走ること無く安定して滑らかに弾けるようになりました。また、同じ音量でも音色の違いが分かるように耳が肥えていき、他の人の演奏を聴くときも、音色の違いが分かるようになりました。1年後の大学卒業実技試験を受け、講評をピアノ科の教授に聞きに伺ったとき、人生初めて「音が良かった」と言われ、涙をこらえるほど嬉しかったのを覚えています。
ロシアピアニズムは習得するのに10年かかると言われています。私はまだ4年目で習得しきれていない身ですが、演奏技術の限界を感じていた頃からの変化はほんとに嬉しく、出来ればもっと早くにこの奏法に出会いたかったので、少しでも早く生徒さんにお伝えしたいという気持ちで教えています。
3. 最後に
私のように手が小さいことで弾きにくさを感じたり、腱鞘炎に悩んでいたり、音が硬いとよく言われる方にはお教えしたいことがたくさんあります。リズム練習で一時的に弾きやすさを感じることもあるかもしれませんが、私自身はその練習は何も楽しくありませんでしたし、もっと根本的な基本の弾き方そのものを変えることが近道だと思います。ロシアピアニズムを習うことで演奏技術が向上し、その分表現力にもより繊細に取り組むことができるようになり、今はピアノを弾くことがずっと楽しくなりました。ロシアピアニズムは今のところ少数派ではありますが、私自身の経験から次世代のピアニズムだと感じています。まずはお気軽に体験していただきたいと思います。